2018年1月18日木曜日

シンガポール 天福宮

  
このブログのテーマは「人と建物」を描いて人生を考える(楽しむ)こと。その意味では各国の寺院建築にはそれぞれ独自のデザインに民族の精神性が表現されていてスケッチするのにうってつけです。今日はそんな寺院建築にまつわる雑感です。
  前回台北の龍山寺を描きました。派手な色彩と重なり合う屋根の絶妙なバランス、その上で踊る龍の彫刻達に感動したのですが、ここシンガポールでもそっくりな建物を発見しました。天福宮(シアン・ホッケン寺院)です。シンガポールの公用語は英語。
  物価も一人当たりのGDPも日本より高く、いわゆる高所得者層が多く住む国際都市です。距離的な隔たりはもちろん、お国柄もずいぶん違うのに「なぜこんなに似ているの?」と思うのは僕だけではないでしょう。
  ちょっとだけ調べました。中国の宗教は歴史の授業で習ったように、仏教、道教、儒教が基本。少なくとも今回描いた両方の寺とも「道教寺院」でした。しかし道教寺院だけがこのような色彩、屋根構成、龍の彫刻をもっぱら採用しているかというと、どうもそうでもないらしい。儒教寺院である孔子廟にも、仏教寺院でも似たようなデザインは存在するようです。
  ただ、中国本土では第二次大戦後共産党が支配権を握ったとき多くの伝統的な寺院(道教だけではありませんが)と宗教に対する国民の価値観が壊され、今ではむしろ東南アジアの中華系の人々によって道教とその寺院が伝えられたということかもしれません。
宗教にかかわる問題に素人の意見を必要以上に述べるのは控えますが、こんなことを推理したくなったのはこの手で建物をスケッチしたおかげです。皆さんも他の国の寺院に行ったときはお参りと記念写真のほかにぜひ自分でスケッチを一枚描いてください。ちょっと人生を余分に楽しめますよ。