2016年7月18日月曜日

人物画の背景を考える


 相変わらず人物画を描いています。制作のプロセスについてはこのブログでも紹介したとおりですが、今日はちょっとマニアックに背景について考えます。というのは昨年開いた個展のアンケートでは全般的に人物画の評判が良くなく、特に背景の暗いものほど「好き」という割合が減っていたからです。
 最近の僕の作品は鉛筆で徹底的に下書きをし、その上にうすく透明水彩を重ねるものです。当然、背景も鉛筆で濃淡をつけ、後から人物の雰囲気にあわせ色を塗ることになります。
 でもそうすると、どうしても背景が暗くなりきつい画面になりがち・・・。そこで今日は背景にいっさい鉛筆の黒い線を入れず、色彩を重視して奥行きを出すことに挑戦してみました。
 この作品は元々モデルさんのポーズが気に入って描いたもの。憂い顔でどこかを見つめるしぐさが魅力的だったのと、椅子にまたがる伸びやかな脚がバランスよく画面のアクセントになっています。
 まず女性の顔を目立たせるために、そして見つめる視線の先を強調させるために、画面の左上に濃いグリーン系の色を置きます。グリーンにしたのはスカートの色と調和させるためと、含ませる水の量だけで明暗が出しやすい色だからです。そのままだと画面の変化が唐突になってしまうので、対角の右下にも同系統の濃い色を置きます。その時この絵のポイントとなる左脚を浮かび上がらせるように背景の色と明度を調整します。
 一方対角の画面右上と左下は出来るだけやさしい色を塗ります。今回はシャツの水色をベースにかつ単調な画面になるのを防ぐために、やはり服にあるピンクを少しだけ混ぜてみました。
  さていかがでしょう。いままでとちょっと違った雰囲気になったような気がしています。皆さんのご意見をぜひお聞かせください。


海外スケッチ旅行に出かけよう その9 セビリアのカテドラルとヒラルダの搭


グラナダでの成果は5枚のスケッチ。この調子でと思ったのですがやはり今回の旅程はきつすぎました。
 グラナダを午後出発し、バスとAVE(スペイン新幹線)を乗り継ぎ、次の目的地セビリアに到着したのは夜。その日は当然スケッチなどできず、バルでワインを飲み、寝るだけ。一泊するとそれなりに荷物の出し入れもあり、時間を取られます。結局勝負は翌早朝に。日の出とともに起き、何が何でも1枚描くぞと悲壮な決意で臨んだのがこのスケッチ。 
 描くのはもちろん世界遺産「カテドラルとヒラルダの搭」。アングルを悩む暇など無く、搭がよく見える場所を見つけるとすかさず腰を下ろしてスケッチを開始。イスラム風の細かな装飾を適当に省き、なんとか完成です。
 そして、いくつかの観光ポイントを駆け足でめぐり、この日12時過ぎにまたAVEで次の町コルドバへ向かいます。それにしても忙しい・・・。

2016年7月10日日曜日

海外スケッチ旅行に出かけよう その8 グラナダ大聖堂


 せっかく海外へスケッチ旅行に行ったのですから、午前1枚、午後2枚、最低1日に3枚はスケッチしたいものです。
 それなのに今回、マドリードでは一枚も描けず、移動に時間を取られたため、昨日も1枚しかかけませんでした。今日はアルハンブラで3枚描いたとは言え、まだ目標には及びません。
 何とか今日中にあと一枚をと思い、有名なグラナダ大聖堂を訪れました。この聖堂はレコンキスタの後で建てられたので、当然デザインにアルハンブラのようなイスラム調はありません。ゴシックからルネサンス様式のボキャブラリーを使っています。
 通常大聖堂の前にはその壮大な姿を誇示する大広場がセットになるはずなのですが、ここグラナダでは大聖堂の周囲は狭隘な路地で囲まれていて、眼に映るのは壁面のディテールのみ。全体像はまったく見えません。
 宗教空間で切り取られる空ばかりを見つめて歩く体験は、旅行者としてはそれなりに満足するものでしょうが、残念ながら「風景画」にはなりにくい・・・。今日はもう描けないかなとあきらめかけたころ、やっと現れた広い空。大聖堂の一部が顔を見せています。
 スペインの強烈な太陽。椰子の木。ゴシック建築特有の鋭い光と影。グラナダはイスラム文化とキリスト文化が共存する町・・・パンフレットにある言葉の意味を改めて感じさせられました。

2016年7月2日土曜日

母と子



今までこのブログで紹介したように、僕の風景画は建物の持つ迫力をダイナミックに表現するため、下書きにペンを使用しています。そして水彩を重ねることによって明暗と素材感を出すという手法をとっています。 
 一方人物画は人の持つ柔らかな線と陰影をより繊細に表現したいと思い、ペンではなく大部分を鉛筆に頼っています。
 でもペンで一気に形を取り、さっと色を塗るのも捨てたものではありません。特にやんちゃな子供をモデルにする時などは、最適な手法です。この子供が我慢してくれたのは15分だけでした。