2016年4月24日日曜日

海外スケッチ旅行に出かけよう その5 アルハンブラ宮殿


ナスル宮の装飾美を堪能した後はアルカサバと呼ばれる城砦部分へ行きましょう。当然お世辞にも「デザイン」などというものはなく、防御の機能を徹底して追及した建築です。
 それでも古い部分はローマ時代に築かれただけあって、十二分に歴史の重みを感じさせてくれます。赤や白、褐色の石壁、土壁が何層にも重なり、それが風化してなかなかいい肌合いをしています。建物の頂部を飾る銃眼は背景ののどかな山並みに溶け込むと、絶妙ないい感じのデザインとなります。
 装飾など無くても、建築として十分絵になるのです。あなたも是非アルハンブラへ。
 
 

2016年4月17日日曜日

海外スケッチ旅行に出かけよう その4 アルハンブラ宮殿


グラナダ二日目。前回は外観を描いたので今回は当然その内部。まず入場時間指定のある有名なナスル宮を訪れました。
 入場するやいなや、イスラム建築の見事な美に圧倒されっぱなし。特にその装飾に対する執念はすさまじい。硬い石をミリ単位で削り上げた小さなパーツを組み合わせユニットにし、さらにその繰り返しがいつの間にか柱や梁とつながっている・・・。
 いままで日本に残った西洋建築をものめずらしく結構一生懸命スケッチしていたのが馬鹿らしく感じられるほどです。
 中は想像以上に混み合っていたので、スケッチは無理かとあきらめかけていたのですが、「ライオンの中庭」に来ると、ちょうどいい位置に休憩用の椅子が。
 さっそくスケッチブックを広げました。今回は6号でなくサムホールを選定。何故かというと、広い画面いっぱいに、この高密度な装飾を短時間で埋め尽くす自信が無かったから。
 「意気地なし!」と言わないように。あなただってその場に行けばきっと僕と同じ気持ちになるはずですから。

2016年4月13日水曜日

海外スケッチ旅行に出かけよう その3 アルハンブラ宮殿



僕のブログを読んでくださっている皆さんへ。今週日曜日にアップできなかったのは色塗りにちょっと苦戦したから。でもとにかく完成です。どうぞじっくりご覧ください。
  絵画の構成要素とは基本的には形(構図)と色。そのうち形、構図については実は今回はそれほど苦労していません。何故なら観光用のガイドブックにあるのとそれほど変わらないからです。でも3月というこの季節。僕はアルハンブラに新たな色の魅力を発見しました。1つは森の色。落葉樹は薄い紫色の枝を伸ばし、新芽の緑と混ざって不思議な雲海のような表情を見せています。そしてもう1つは背景の雪山の色。その輝く白は空よりも明るく、重厚な宮殿の外壁と見事な対比を見せてくれるのです。
  この2つの色彩を表現すべく、混ぜる絵具の色、水の分量とぼかし方、マスキングインクの使い方など僕なりにかなり思案し、試行錯誤しました。結果的に予定時間を大幅にオーバー、日曜日のブログにアップできなかったというわけです。
  もっともそのせいか今までの僕の絵とちょっと違った色調となり、新たな可能性を見出した気がしています。いかがでしょうか?
A図

B図

  さて前回お約束したように、マスキングインクの効用についてはもう少し説明しておきます。A図がマスキングインクがのった状態、B図がマスキングインクを取り去り、雪山に薄く陰を描き足したところです。B図の白い部分は一切何の色も塗っていない紙のままの白。雲の白よりもさらに白いことがわかるでしょうか。
  マスキングインクを使わないと、画面に何度も色を塗っているうちについうすい色をのせてしまい、ここまでの明度差は確保できないのです。雪山の絵にチャレンジしてやろうと思っている方、是非参考にしてください。
  ちなみにこの絵のサイズは風景画としては久しぶりに6号でかなり大きめ。本当はみなさんにすぐにでも原画を見てもらいたいのですが、正式なお披露目は次回の個展開催で。どうかしばらくお待ちください。

2016年4月3日日曜日

海外スケッチ旅行に出かけよう その2 アルハンブラ宮殿



 着彩の第一段階は明暗の確認です。プルシャンブルーで濃淡をつけ画面の構成を考えます。
今回のポイントは二つあります。一つ目は線の太さ。お気づきの方もいるかもしれませんが、僕の愛用のペンが現地で使えなくなったこともあり、いつもより線がちょっとばかり太いのです。だからあまり繊細な筆使いをしてもペンの強さに負けてしまい、役に立ちません。しかも周辺は森と木立ばかり。細かい木々の陰を延々と描いても退屈な絵になってしまいます。
 そこで画面の中央、お城の足元周りをわざと一番濃く、周辺に行くにしたがって薄めの濃淡にしてみました。線の強さとバランスの取れるくらいの濃さで、細かな線にこだわらず、大きく画面の明暗をつけるようにしました。いかがですか。ちょっと存在感が増したような気がしませんか。
 もうひとつのポイントは背景の雪山をどう描くかということ。実は現地でスケッチしたとき一番感動したのは宮殿そのものではなく背後に広がる山脈の真っ白な雪でした。
 アルハンブラ宮殿といえば地中海に面した南国の都・・・そんな僕のイメージを覆すこの山脈。調べてみるとグラナダの南に標高3478mというシエラネバタ山脈が広がっていました。
 この美しい白い山脈を表現するためにちょっとした工夫をしました。山脈部分を良く見てください。薄いグリーンになっていますね。これは緑色の絵の具ではなく「マスキングインク」というゴムの溶液のようなものです。これを塗った部分は水をはじくので一切の色がのりません。つまり絵が完成したときこのインクを取り除くと本当の「真っ白」な雪が現れる(はず?)なのです。
 その効果やいかに。次回以降をお楽しみに。