2008年7月27日日曜日

京都国立博物館その1

以前、「京都文化博物館」のコメントに辰野金吾という日本の建築界の大御所について書きました。
実は明治時代、日本人による西洋建築を作るべく、東大建築学科を卒業した記念すべき1回生は4人いました。
一人があの辰野金吾、そしてもう一人がこの京都国立博物館の設計者である片山東熊(先生)です。
彼の設計した建物にはいわゆる「国立○○○館」という昔の「宮廷」風の建物が多く、高価な材料を「華麗」にデザインする、その存在はうらやましさもあってはつい「先生」と呼んでしまいたくなります。

このスケッチも博物館の単なる「門」なのですが、彼の手にかかれば、石と煉瓦、銅版と鉄を優雅な形と端正なプロポーションでまとめ、ご覧のとおりの芸術品となります。
門だけでも絵になるという事実・・・「先生」のわざと情熱を改めて思い知らされた日でした。

2008年7月20日日曜日

水都大阪

このブログを眺めてみると、どういうわけか京都や神戸の話題が多く、「大阪」はほとんど出てこないことに気づきました。
では大阪には価値ある風景が無いのかというと、もちろんそんなことはありません。特に最近は「水都大阪」として街つくりを見直す動きが活発です。
                                                                    
そんなわけで、今日は中ノ島にある「大阪市中央公会堂」を訪れました。有名な建物なので、僕が行ったときも周りは日曜画家でいっぱい。例によって人ごみを避け、堂島川を渡り反対側に出ると、釣り人が一人二人いるだけで、実に静かです。
ゆっくりと流れる堂島川と堂々とした公会堂の姿はまさに「水都大阪」・・・・大阪も捨てたものではありません。

ただし、現実はこの画面の上には汚いコンクリートの高速道路が走っています。
街つくりはまだ半ば。残念ながら、当分「上は見ないでください」と注意書きがいるようです。

2008年7月13日日曜日

名古屋 加藤商会ビル


僕は大学時代ずっと名古屋に下宿をしていました。そのせいか、今でもこの土地には格別の愛着があります。
ここは納屋橋の交差点。重厚なアーチの橋も、この加藤商会のビルも昔からここにあった・・・・はずなのに、残念ながら、この建物はあまり記憶になく、近くの安い寿司屋で騒いだことだけが印象に残っています。人間の記憶とはいい加減なものですね。
インターネットで調べると大正時代初期のビルで、設計した人は誰だかわからないとのこと。
しかし石とレンガの素材をうまく使い分け、小ぶりな縦長のプロポーションを大正レトロの雰囲気にまとめ上げる腕は只者ではないと想像がつきます。
納屋橋のシンボルとして現代までこの建物を残した功績は絶大です。
スケッチを通して、その土地の昔と今を想うのはとても楽しいことです。これからもそんなチャンスがあればいいなと思います。
ちなみに、昔騒いだ寿司屋はつぶれていて、あの味を思い出す望みはかないませんでした。・・・・・残念!

2008年7月6日日曜日

住吉川の風景 その2

実は先日、前回描いた同じ場所を訪れてみました。10年前の続きをしようというわけです。
どうなっていたと思いますか?

今では、もう水平線に浮かぶ六甲アイランドは見えません。今度は「湾岸道路」なるものが河口のすぐ外側にその威容を誇っています。
さすがにこの「新しい時代の風景」をスケッチする気にもならず、憤りを胸に、あきらめて川沿いを北へ歩き始めました。

しばらくすると正面に「住吉」の名ににふさわしいリッチなマンションが・・・・。「オーキッドコート」という外人建築家の設計した建物です。いわゆるバブルの頃の建物で「お金をかければいい建物はできる」・・・・などと影口をたたく輩(やから)もいないのではないのですが、自分でスケッチしてみると、そんな誤解は吹っ飛んでしまいます。

背景に六甲山の山並み。水辺に茂る水草と堤の両脇の木々。石畳はこの建物への道標(みちしるべ)です。
そしてクラシカルな材料ときれいなプロポーションでデザインされたこの洋館はまるでこの角度で眺められることを予測していたかのように、風景に溶け込んでいます。

「風景」つくりの難しさと楽しさを実感した一日でした。