2007年3月31日土曜日

友人の子供

彼らは学生結婚をしました。(夫婦とも僕の友人です)
だから僕が就職するとまもなく子供ができ、「遊びにおいで」の誘いにのって、ものめずらしさ半分で新居を訪問しました。

いました。子供が・・・・。

とにかくよく動く。一秒たりともじっとしていません。当たり前ですが僕が絵を描くまで待っていてはくれません。このとき彼のために、5~6枚クロッキー帳を費やしましたが、まともにおしまいまでかけたのはこれ一枚でした。


親戚の子や近所の子。「かわいい」子もいたけれど、この時のように、小さな生命を間近に、素直に感じたことはありませんでした。とても新鮮な経験で、特にこの子は後頭部がずいぶん大きくて、僕は思わず「森鴎外」みたいだとつぶやきました。

世間でよく言う「初孫はかわいい」というのは、そこにきっと昔の自分を見るからでしょう。
それに倣っていうなら「初めての友人の子供が新鮮」なのは、そこに僕の近い将来の期待と不安を予感させるからでしょうか。

この子は大きくなって、両親と同じように学生結婚をしたそうです。
「初孫はかわいい」という言葉も彼らに先を越されそうです。

2007年3月27日火曜日

花見



花見の季節です。
若いころは、大人の「宴会」のだらけた雰囲気がなじめず、ばかにしていたことを白状します。

でも最近は、同じ「美しい」桜を見ても、一緒に見る人によって、会話が違うということに気づき、花見の面白さにやっと、目覚めたというわけです。
だから、友人と行っても、会社の上司や後輩と行っても、家族と行ってもそれぞれ違う花見を心から楽しんでいます。

さてこの絵は1989年に描いているのですが、なんとなく花見らしくありません。
花は満開なのですが、人がいません。出店も、ちょうちんもなく、あるのは民家と広い空のみです。

この頃、私はあるプロジェクトの設計のため、ここ四国今治に単身赴任していました。
たまの休日に一人で、することも無く、川べりを歩いていてこの風景に出会いました。

桜の咲き具合を語り合う人がいるわけでもなく、宴会を楽しむわけでもありません。ただ暖かい陽射しの中で、目の前に広がるピンク色をスケッチブックに重ねていました。
皆で楽しむ花見も楽しいのですが、一人の花見もよいものです。
絵が出来きてそろそろ帰ろうと思っていた時、お母さんと一緒に散歩に来ていた女の子が僕の絵をのぞき込んで「きれい」とほめてくれました。
「ありがとう」・・・僕の気持ちを理解してくれて。

2007年3月25日日曜日

ホテル




その昔「ホテル」というドラマがありました。石森章太郎の原作です。

そのドラマの人間模様に魅かれて・・・というわけでもないのですが、ホテルの客室はよく見ると結構面白く、僕にとっては、貴重なスケッチの対象です。

このスケッチは1994年11月2日に描いています。「ホテル トアロード」。神戸では女性客に人気のあるホテルです。

ホテルのパンフレットに「イギリス調・・・」のコメントがあるように、インテリアの家具は凝っていてなかなかおしゃれでした。10年以上昔のことでよく覚えていませんが、当時は白木でパステルカラーのホテルがはやっていた中で、濃い木目の、クラシカルなデザインが印象に残っています。

スケッチをよく見てください。ワードローブの中にスリッパが置かれています。ミニバーにはコップ、ポット、ティーバッグ、湯のみ。デスクにはテレビ、ティッシュボックス、ホテル案内、鏡、スタンド。ティーテーブルには灰皿とホテルのマッチが置いてあります。バスルームは浴室と化粧室が別れており、洗面カウンター上にはドライヤー、歯ブラシなどアメニティーセットの入ったカゴがおいてあります。浴室内には床置き用のマット、TEL、石鹸などが置かれています。ベッドはフリルのついたベッドカバーが特徴的です。部屋の窓はこれも珍しい、外に向かって開くタイプの貴族邸宅風(?)の窓。これらはひとつひとつが「ホテルマン」のもてなしの心の表われなのでしょう。

あなたも今度ホテルに泊まったら、人間模様の演出を味わってみたらいかがでしょう。

2007年3月22日木曜日

歴史都市メルボルン

1991年オーストラリア、メルボルンでのスケッチです。大学を卒業、就職して10年経ち、休暇を取ってオーストラリアに旅行しました。
僕の大学の専攻は建築史で、ゴシック建築はゼミなどで知識としては何度もお目にかかっていましたが、実物を見るのはこれが始めて。日本文化には無い堂々とした姿に魅かれて、思わずスケッチを始めていました。家内と娘をほったらかしにして気がつくと2時間が経過していました。
オーストラリアで観光都市としてはシドニーのほうが有名ですが、僕は歴史都市としてのメルボルンのほうが感銘を受けました。

2007年3月20日火曜日

歴史の街 近江八幡



2005年秋、近江八幡のスケッチです。
前の晩、一泊旅行で大学の建築学科の同窓会があり、仲間と別れた後、スケッチをするために、ここへ直行しました。
有名な観光地ですが、僕にとっては池波正太郎の小説(剣客商売)のTVロケ地であることのほうが重要です。
僕が彼の作品を好きなのは、とにかく人を描くその眼差しが暖かいことです。江戸の人々の日常がこの近江八幡の風景に見事に重なり、スケッチをしていてとても幸せな気分になりました。
そして翌日の新聞を見ると、この「近江八幡の水郷」が国指定の「重要文化的景観」第一号に選定された記事が載っていました。僕の文化を見る目の確かさが証明されというわけです。

2007年3月18日日曜日

山の辺の道の地蔵さん

 第 2回目です。今回はさらに昔に遡ります。
このスケッチは僕が大学を卒業して間もないころ、1983年のゴールデンウイークに描いています。場所は奈良の山野辺の道です。天気は曇りがちだったのですが、あたりは一面の田んぼで、草木の新緑があざやかだったことを覚えています。
たぶんガイドブックにある有名な寺も見に行ったと思いますが、印象に残っているのはこの地蔵さんです。6体あるのですが、どれも個性があって、窮屈そうに小屋の中に並んでいる姿がなんともユーモラスでした。
よく考えると、上屋だけ、あるいは、地蔵さんだけだったら、面白くありません。きっと描いていなかったでしょう。
建物と人(地蔵さん)がセットになって、懐かしい、暖かい感情を呼び起こしてくれたのだと思います。

2007年3月17日土曜日

石屋川と御影公会堂

このブログは僕がいままで描きためたスケッチをもとに、人と建物について想いを語るものです。
時系列に並べるつもりはなく、昔と今を往ったり来たりして楽しめればよいと思っています。

最初のスケッチは神戸の石屋川と御影公会堂です。1996年9月(阪神大震災の翌年)に描いています。場所は自宅の近くで、僕のお気に入りの散歩コースです。

古めかしい、壁やスチールサッシがあちこち痛んだ御影公会堂と静かで落ち着いた石屋川の取り合わせは何とも美緑的(魅力的)ではありませんか。このブログのタイトルの意味のひとつはここにあります。

もうひとつの意味は・・・・・いずれ語りたいと思います。