2007年4月21日土曜日

横浜赤レンガ倉庫 昔と今

 
「君の絵は風景や人のときはそうでもないけど、建物を描くときの線は硬いね」という貴重な意見をいただきました。


言われて見ると、特にこのスケッチのように、若い頃描いた建物の絵に顕著のようです。(1982年の秋) たぶん仕事で建物の設計を始めたばかりで、絵にもその気負いが出ていたのでしょうか。

 2002年に商業施設として甦ったこの赤レンガ倉庫は、現在は有名な観光スポットとして、若い人でにぎわっています。しかし僕がスケッチしていた頃は、ごらんのように、倉庫の前には建設資材が山と積まれ、雑草が生茂った、まさに「廃墟」でした。
でもその分、人気(ひとけ)が無く、ボーっと一人で過ごすには快適な場所で、隠れ家に来ているようなひそかな興奮があったのです。

 昨年、家族で久しぶりにここを訪れましたが、あの頃の面影はまったくありません。過去の遺物を珍しがる人でごった返していると言ったらよいのでしょうか。僕「一人」が、パンをかじりながらスケッチした、あの頃の「静けさを独占する楽しみ」はもうありません。

 でもそれは、贅沢というものかもしれません。今は「一人」だけでなく、「家族」とここで食事する楽しみが出来たのだから。
僕の「硬い線」もきっと、だんだん、柔らかくなっていくことでしょう・・・。

2007年4月17日火曜日

春の色

このブログを見た人から色々なご意見をいただいています。
「昔話ばっかりで、新しいのはないの?」というご要望にお応えして、今年の絵(2007/3/31)を載せることにしました。

この日は、暖かく、家にいるのはもったいなくて、久しぶりに絵を描こうと思い、出かけることにしました。
少しけだるい、かすんだ明るさには、農村こそがふさわしいと思ったものの、ここは神戸の街の中。
そんなに都合よく農村があるはずもありません。

ところが、案外手軽に農村と民家が見られる場所があったのです。それは大阪緑地公園の「日本民家集落博物館」。 ここの良いところは、「民家だけ移設しました」というのではなく、周りの環境を含めて全部再現していることです。だから描いていてほとんど違和感がありません。

いくつかあった民家からこれを選んだのは、枯れ草色の茅葺き屋根に芽吹いている黄緑色の雑草がとても鮮やかだったからです。
そして背景には咲き始めた桜の花びらがふんわりと浮かび、このあたりを包む空気全体をのどかな「春色」にしています。

これが今年の僕の「春の色」です。皆さんの「春の色」はどんな色ですか?

2007年4月9日月曜日

神戸港の釣り人



神戸っ子は港が大好きです。
その証拠に地元「神戸新聞」には毎日、明石海峡を通る豪華客船と神戸港に入港する船名が記されています。

そういうわけで、今日は港と船のスケッチです。1983年4月に描きました。

天気もよく海がきらきらと光って眩しい日でした。
釣り人と小さな船の取り合わせが面白くてスケッチをしました。
釣り人は二人連れでした。仲の良いカップルでしょうか。
船はずいぶん、ずんぐりとしたプロポーションでけっしてかっこよくはありません。でもそれが可愛らしく、休日の午後の、のどかなシーンにはとてもふさわしく思えました。

僕も神戸っ子に少し近づいた気がします。

2007年4月4日水曜日

好きな絵は

皆さんは「好きな絵は何?」と聞かれたらなんと答えますか。

僕ならこう答えます。
一番はコローの「真珠の女」。
モナリザと同じポーズの女性が僕を見つめています。その眼差しの魅力。一度実物が見たいと思っています。

2番目はフェルメール「ターバンの少女」。
振り返って見せる、まさに「つぶらな瞳」。数年前に日本に来たのですが、あいにく、見に行く時間が取れませんでした。残念です。

3番目はマネ「すみれのブーケをつけたベルト・モリゾ」。
つい先日神戸市博物館で本物を見ました。上品でクラシカルな黒い服の装いとは対照的な、活動的で知的な表情に魅かれ、しばし立ち止まってしまいました。

つまり、簡単に言えば、僕は人物画、それも女性像が好きなのです。
だからこのブログも本来なら、女性像の絵で埋まるはずなのですが、プロの画家でない僕にはそう簡単にモデルが見つかりません。

そこで、数年前(2002年4月)、自宅近くの絵画教室に顔を出し、久しぶりに、この女性像を描く機会を得たというわけです。
長い髪と物静かな雰囲気が印象的なモデルさんで、遠くを見る視線が何かを語りかけているようです。とても素敵な横顔でした。

何故「つぶらな瞳」を描かないのかって?
それが描ける場所には、数年前に定年退職したと思われる歴戦の方々が、すでに陣取っていたからです。